文章を書くうえで、たった一文字の違いが読者の印象を大きく変えることがあります。
「~してください」と「~してみてください」もその代表例でしょう。どちらも丁寧な依頼表現ですが、使う場面を間違えると文章が堅苦しくなったり、逆に曖昧に感じられたりします。
この記事では、ライターとして知っておきたい両者の意味の違いと使い分けのコツを、具体例を交えながら解説します。
基本の意味と印象の違いを理解しよう
「~してください」は“行動を求める”依頼表現
「~してください」は、相手に明確な行動を求めるときに使う言葉です。
相手が「今すぐ行動すべきこと」を伝える、いわば“指示”に近い表現といえます。
たとえば操作マニュアルやチュートリアルでは、次のように書くとスムーズです。
例:「次に、『設定』ボタンを押してください。」
このように、作業手順を明確に伝えるシーンでは「~してください」が最も適しています。
ただし、文章全体でこの表現が繰り返されると、読者に「命令されている」ような圧を与えることもあります。ビジネス文書や説明書では有効ですが、コラムやブログでは少し堅く感じられる場合もあるでしょう。
「~してみてください」は“提案・促し”の表現
一方、「~してみてください」は、相手に試してみることを勧める柔らかい表現です。
語中に含まれる「みる」という動詞が、“試行”や“体験”を示すため、「押しつけ」ではなく“提案”のニュアンスを含みます。
例:「気になる方は、一度試してみてください。」
この一文には、「やってみてもいいですよ」「もし興味があれば」という相手への配慮が感じられます。
読者の心理的な負担を軽くし、行動を自発的に引き出したいときに最適な表現です。たとえば美容・健康・ライフスタイルなどのコラムでは、読者の“好奇心”を促す言葉として自然に使えます。
ライター視点で見るニュアンスの違い
ライティングの観点から見れば、「~してください」は行動を起こさせる文章、「~してみてください」は寄り添う文章です。
どちらを選ぶかによって、読者との距離感や文章のトーンが変わります。
たとえば次のように比較してみましょう。
-
「この方法を試してください。」
→ 行動を強く促す、少し命令的な印象。 -
「この方法を試してみてください。」
→ 体験を勧める、柔らかく提案的な印象。
この違いを意識して使い分けることで、読み手が「信頼できるライターだ」と感じる文章に近づきます。
ライティングでの使い分けポイント
読者の心理に合わせたトーン設計
ライティングでは、読者がどんな気持ちで記事を読むのかを意識することが大切です。
初心者向けの記事では「~してみてください」を使うことで心理的ハードルを下げられます。逆に、操作手順や公式マニュアルなど“確実に行動を促したい場面”では「~してください」が効果的です。
たとえば、メイクのハウツー記事なら:
-
「ベースメイクを整えてください。」よりも
-
「ベースメイクを整えてみてください。」
の方が、読者に“挑戦してみよう”という気持ちを与えます。
このように、読者の立場に寄り添ったトーン設計が重要です。
文章の目的で選び分ける
文章の目的が「行動を指示する」か「行動を提案する」かによって、使うべき表現は変わります。
-
「~してください」:手順書・操作ガイド・業務マニュアル
-
「~してみてください」:コラム・レビュー・体験記事
たとえば、レシピ記事の場合も使い分けが可能です。
材料を混ぜる工程では「よく混ぜてください」と具体的な指示を出し、最後の味付けについては「お好みで塩を足してみてください」と柔らかく締める。
このように文脈に応じて使い分けると、自然で読みやすい文章になります。
実際の文章例で比較してみよう
以下の例を比べると、印象の違いがよくわかります。
| 文例 | 印象 |
|---|---|
| この方法を試してください。 | やや強く、実行を求める印象。 |
| この方法を試してみてください。 | 提案的で柔らかく、自然な印象。 |
| ぜひ、この方法をお試しください。 | 丁寧で上品だがややフォーマル。 |
| まずは気軽に試してみてください。 | 親しみやすく、読者に寄り添う印象。 |
微妙な違いですが、文章全体のトーンに大きく影響します。
ライターは“伝える”だけでなく、“どう伝えるか”を意識することが求められます。
自然で伝わる文章を書くためのコツ
同じ依頼表現の連続を避ける
「~してください」が続く文章は、どうしても命令的でリズムが単調になります。
同じ文末が続くと読みにくく感じられるため、文末表現の変化を意識しましょう。
例:
× 「次に設定を開いてください。項目を選択してください。保存してください。」
○ 「次に設定を開き、項目を選択します。最後に保存を行いましょう。」
このように語尾を工夫することで、文章全体のテンポが良くなり、読者の理解も深まります。
他の表現への言い換えも活用しよう
「~してみてください」ばかりを多用すると、文章が単調になります。
同じ意味を伝えながらも言い換えを活用することで、表現に奥行きが生まれます。
たとえば以下のような言い換えが効果的です。
-
「~するのもおすすめです」
-
「~していただくとよいでしょう」
-
「~を意識してみると変化が感じられます」
こうしたバリエーションを持たせると、文章全体にリズムが生まれ、読者に飽きさせない構成になります。
文章全体のトーンを統一する
記事内で「~してください」と「~してみてください」が混在すると、読者は無意識に違和感を覚えます。
どちらの表現を軸にするかを、記事の目的と読者層に合わせて最初に決めることが大切です。
たとえば、初心者向けのコラムなら「~してみてください」で統一し、専門的な手順書では「~してください」で統一する。
トーン&マナーを整えることで、文章の信頼性と読みやすさがぐっと高まります。
まとめ:「伝える」から「伝わる」へ
「~してください」と「~してみてください」は、どちらも正しい日本語です。
しかし、ライティングでは“正しいかどうか”よりも、“どう伝わるか”が重要になります。
「~してください」は読者に行動を起こさせる力を持ち、
「~してみてください」は読者に寄り添いながら促す力を持ちます。
この違いを理解して使い分けることができれば、あなたの文章は一段と洗練されるでしょう。
言葉の選び方ひとつで文章の印象は変わります。
次に記事を書くときは、ぜひこの二つの表現を意識して使い分けてみてください。
